「これからの日常清掃や定期清掃で何か革新的なアイデアは無いのか?」というような話がよく出ます。最近、いよいよ業務用のお掃除ロボットも発売され話題になっておりますが、今のところは大きなイノベーションは考えられません。やはり人がすべての業種ですので、気遣い、心遣いができるスタッフによる高いホスピタリティの実現を伴ったサービスの提供。これにつきると思います。そのためには、従業員が「清掃」という仕事に誇りを持てるようにすることが、会社あるいは経営者の私の務めだと考えています。清掃にお客様が求めるものは、「単純に清掃をして綺麗で快適な環境を整えるサービス」ということだけではありません。その業務の担い手が、気遣い、心遣いができ、高いホスピタリティを実現できる人材であることが最も大切なことだと私は考えています。
今でこそ、そのように考えるようになりましたが、私がこの業界に入ったのは大学1年生の時、「長髪でも出来るアルバイト」を探していて、スーパーの夜の定期清掃アルバイトを始めたことからでした。高校生のころからバンド活動に夢中になり、大学に入学するとすぐに髪を伸ばし始めました。今では弊社のスタッフ募集では「長髪、金髪、ピアス禁止!」と謳っていますが、当時の私はロン毛でパーマ、ハイライトブリーチまで入れてロックバンドをやっていたのです。スーパーの閉店後に3名1チーム、2~3チームで床の定期清掃を行うことが中心でした。まずモップ掛けから始まり、かっぱぎを覚えて、ポリッシャーを教わるころには結構仕事を楽しんでやっていました。初めて剥離洗浄をしたときは、床がまるで新品の様に綺麗になるのを見て、とてもびっくりしました。「この洗剤はどんな汚れでも落とせるんだ!」と思った私は、上司に頼んで剥離剤を分けてもらい、実家の掃除をして親に喜ばれたのを今でも覚えています。
その後、定期清掃中心の会社から建築美装、養生クリーニング中心の会社に移り、様々な美装クリーニングを経験しました。コンクリート打ちっぱなしの小学校の体育館の外壁をサンダーで削る仕事は1ヵ月近く毎日足場の上で、粉じんとの戦いでした。店舗の床のフローリングをあえてくすんだ仕上がりにしたり、大理石の床を100㎡に渡り三枚刃で削ったりと、新築美装は定期清掃とは全く違う世界でキツイ仕事でしたが、学ぶことも多く、その後に役に立つことを身につけることができました。
2人目の子供が産まれてもなお、将来が見えず、夢に破れて悶々と清掃のバイトで生活費を稼ぐ日々が続いていたそんなとき、高校の後輩から「うちの会社で新規事業を立ち上げるので、正社員を募集しています。間宮さん、面接に来ませんか?」と誘われました。それが、後に私が独立することになる元の親会社、株式会社クリーンテックに入社するきっかけでした。クリーンテックは分譲マンションの日常清掃と定期清掃が中心の会社で、今度は専有部のサービスを始めるのに際し、新部門を立ち上げようとしていました。まずはレンジフードのクリーニングとエアコンの分解洗浄です。油汚れでギトギトになったレンジフードを分解し、ファンとフィルターは外で高圧洗浄。お部屋の中でフード回りは手作業で掃除。ピカピカに仕上がると奥様達はとてもびっくりして「うわーさすがプロね!こんなに綺麗になるんだ―!」と喜んでくれます。その言葉や表情がなんだか嬉しくて、お金を稼ぐだけでない、仕事に対するやりがいを感じるようになりました。
サラリーマンになろうと心に決めてクリーンテックには入社したのですが、入社3か月目で当時の社長よりこんなメッセージをもらいました。
「会社の夢=企業の永続的発展。社員の夢=独立経営者。人間の最終的願望=自己完成の欲求を望むのであれば、会社を経営するのが一番いい。そして自分自身を磨くには、会社を経営してみること、いや、経営し続けること、これに尽きます。だから間宮君も、一日も早く経営者になってください。そして、お互い経営者同士として、明日のロマンを語り合える日が一日も早く来ることを願っています。」当初は真意が分かりませんでしたが、当時、社長は創業10年を超えた会社を「分社化」と言う形で発展、展開していくことを考えていたのです。それも創業者個人としての夢ではなく、「社員ひとり一人の幸せの実現とお客様第一の実践」を目指した結果としてたどり着いた一つの結論だったそうです。私はその夢に呼応するように、そしてその思いを実現すべく、何より自分にとっても最大のチャンスだと思い、入社6年目の平成15年9月に分割分社という形で独立し、株式会社ファイヴエーカンパニーを立ち上げました。
独立当時は、それまで同様に現場業務を行いながら、経営という新しい仕事をし、本当に我武者羅に走り続けました。日本はバブル崩壊から現在まで、「失われた30年」と言われていますが、まさにその真っ只中に会社を始めたわけです。そんな社会情勢にもかかわらず、本当に多くのお客様と素晴らしい従業員に恵まれ、成長を続けることができています。
その原動力の一つが、社員教育にずっと力を注いできたことだと思っています。弊社では、正しい考え方を学ぶツールとして全社的に「7つの習慣®️」研修を導入しています。私自身、この書籍を読んだり、研修を受けて自身に取り入れることで本当に大きな力を得ました。社員にも一緒に学んでもらい、共通言語にすると共に組織文化の土台として「7つの習慣®︎」を身に着けてもらいたいと考えています。当初は私が社内インストラクターの資格を取り研修をしていましたが、独立に伴って、妻が研修担当の役割を担うようになりました。 「7つの習慣®️」の他、コーチングやNLPのトレーニングも受け資格を取って、定期的に様々な研修を実施しています。妻は、今では社外でも研修するようになり、フランクリン・コヴィー社が提供する「7つの習慣Ⓡ」に基づいたリーダーシップ教育&学校改革プログラム「The Leader in Me」の講師として、学校で「7つの習慣Ⓡ」を教える仕事もしています。
さて、現在日本は少しずつ景気回復しているのは事実ですが、一方で好況を実感していらっしゃる方は少ないのではないかと思います。むしろ問題の方が多く、中でも一番深刻な問題になっているのが人手不足です。数年前からまずは外食産業で影響が出始め、徐々に多くの業種でこの人手不足が問題となっています。ヤマト運輸を中心に人手不足を理由とした値上げも話題になりましたが、労働集約型ビジネスであるビルメンテナンス業はもっとも人手不足で苦しんでいると言ってもいいでしょう。技能実習制度の改定による外国人の受け入れも、国も急ピッチで進めていますが、これも一時的な対応にしてしまうと逆に後で大きなしっぺ返しがありそうです。AIやIOTといった技術革命により、日本の産業そのものが大きく構造変化を迎えるのも間違いないと思います。
そんな激動の時代だからこそ、変化に対応するのではなく、自ら変化を起こしていくこと。そして、常に原則に立ちかえり「お客様第一」と「従業員の幸せの実現」、「社会との調和」「我が社独自の価値の創造」を目指して、これからも一歩一歩成長を続けていきたいと考えております。
2020年1月 代表取締役 間宮 孝洋
間宮 孝洋(まみや たかひろ)
1967年 | 東京都三鷹市出身 |
1985年3月 | 都立国立高校卒業 |
1990年3月 | 明治大学法学部卒業 |
1997年11月 | 株式会社クリーンテック入社 |
2001年10月 | フランクリン・コヴィー(株)認定 「7つの習慣」社内インストラクター資格取得 |
2003年9月 | 株式会社クリーンテックより分社独立 株式会社ファイヴエーカンパニー設立 代表取締役就任 |
現在に至る |